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農業×カーボンニュートラルの挑戦——Seasonが描く持続可能な未来

福知山市を拠点に活動する農業ベンチャー「Season」が、新たな取り組みを始めている。
同社は、万願寺とうがらしや三和ぶどうの生産と加工を手掛けながら、カーボンニュートラル・カーボンマイナスの実現を目指すプロジェクトを推進している。
農業の6次産業化を地域で進めることで、廃棄ゼロと環境負荷の軽減を両立する仕組みづくりに挑戦しているのだ。本記事では、この内容を具体的に紹介する。
この取り組みは、福知山市の起業家支援プロジェクト「Fスタートアップ」にも採択され、地域全体での循環型農業の構築を目指している。
農業と環境問題を掛け合わせたビジネスモデルは、今後の持続可能な地域づくりの鍵を握るかもしれない。
温暖化の影響を受ける農業

近年、野菜の高騰が続いていると感じていないだろうか。
実際に、気候変動の影響が深刻化する中で、農業の現場に影響が出ている。Seasonが主に生産する万願寺とうがらしも、気温の上昇によって生育環境が変化し、生産量の減少がみられているという。
「2024年の夏は特に暑く、従来の栽培方法ではうまく育たない作物も出てきました。農業を続けるためには、気候変動への対応が不可欠です」と、Seasonの久保代表は語る。
そこで同社が注目したのが、「バイオ炭」を活用した農業のカーボンニュートラル化。
バイオとは、植物由来の廃棄物等を炭化したものである。それを土壌に埋めることで炭素を固定する技術が注目されている。
農業の過程で発生する温室効果ガスを削減しながら、土壌改良にもつながる可能性を持つ。
「廃棄ゼロ」から「カーボンニュートラル、そしてカーボンマイナス」へ

Seasonのプロジェクトの軸となるのは、「廃棄ゼロ」と「カーボンニュートラル」の両立だ。
同社は、農作物の栽培後の残渣、地域の未利用バイオマス資源であるおからや籾殻等をバイオ炭に変換し、それを農地へ還元する仕組みを構築しようとしている。
例えば、福知山市の食品工場では、大量のおからが日々副産物としてでてくる。また、稲刈りシーズンに大量にでてくるもみ殻の処分に苦慮している。
これらをバイオ炭として活用することで、廃棄物の削減だけでなく、農地の土壌改良にもつながり、さらに環境負荷の低減に寄与する。
「今はまだ試験段階ですが、将来的にはこの技術を福知山市全体、さらには他の地域へも展開したいと考えています」と代表は意気込む。

技術的課題と今後の展望

しかし、このプロジェクトにはいくつかの課題もある。特に問題となるのが、バイオ炭を大量に生産するための設備と、物流コストだ。
「現在使用しているバイオ炭は、岡山県の炭化炉で炭化してもらって取り寄せています。しかしこれは輸送コストが高く、安定的に供給するには地域での生産が必要です。今後は移動式の炭化炉の導入も検討し、より効率的で環境にも優しい仕組みを構築したいと考えています」と久保代表は語る。

また、炭素固定の効果を科学的に証明し、環境価値を可視化することも重要だ。
企業や自治体と連携し、カーボンクレジットの活用も視野に入れながら、持続可能な農業の仕組みを模索している。
「将来的には、企業の環境対策としてバイオ炭を活用するビジネスモデルも考えています。例えば、地元企業がカーボンニュートラルの取り組みとして、私たちと共に取り組むことで、地域経済と環境保全の両方に貢献できるような仕組みを作りたい」と話す。
地域と共に進む、持続可能な農業の未来

Seasonの挑戦は、単なる農業の効率化ではなく、地域全体での持続可能な循環型農業を確立することを目標としている。地域の食品工場や行政、企業と連携しながら、農業の可能性を広げる試みは、全国的にも注目を集めるかもしれない。
「私たちのビジョンは、笑顔あふれる居心地の良い世界を作ること。そのために、農業を通じてソーシャルグッドと経済合理性の両立を目指し、地域の皆さんと一緒に新しい価値を生み出していきたい」と代表は語る。

気候変動が加速する中で、農業がどのように持続可能な形で進化していくのか。そして、私たちの食卓はどう変わっていくのか。その答えの一つが、Seasonの取り組みにあるのかもしれない。今後の展開に引き続き注目していきたい。
<執筆者> 福知山公立大学 地域経営学部 地域経営学科 3年 森中公太
株式会社Season HP https://season-vege.com