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”味で挑む”フィナンシェで切り拓くB型就労の新しい形

今回は、B型就労者の賃金上昇のため、オリーブを使用した商品開発を行っているGrowSpiralの菅谷快晴さん、林昂佑さんのお二方に取材をしました。このプロジェクトを通じて菅谷さんらの考えるB型就労者の今後について商品開発、マーケティングの視点からお聞きしました。

目次

プロジェクト始動の背景と思い

学生記者:今回のプロジェクトを実行することを決めた背景についてお聞きしたいです。

菅谷さん:私自身福祉に関して特別興味を持っていたわけではないのですが、先日、B型就労者の管理者とお話しさせていただく機会がありました。その際、B型就労者の時給の話になって、彼らの時給は約243円で、一般的な時給と比較してかなり低い水準であることを実感しました。そこで抱いた違和感から今回のプロジェクトを発案するきっかけとなりました。

 あまづキッチンさん(https://nextefukuchiyama.com/archives/1710)というB型就労者に対する支援を行っている団体がありまして、最初はそこと協力してオリーブを使用したアイスをつくろうと思っていました。その後、いろいろと事情があって最終的にフィナンシェを作ることに決めました。

偶然が招いた道筋

学生記者:当初作成する予定だったアイスを断念し、フィナンシェに変更した理由を教えてください。

菅谷さん:まず、アイス制作を断念するきっかけとして、あまづキッチンさんが所有するアイスをつくる機械が故障してしまい、プロジェクトの進行が停滞してしまったことが挙げられます。自分たちのコントロールできない問題が発生してしまったので、つくる商品を新たに考えて、その結果決まったのがフィナンシェでした。

菅谷さん:フィナンシェに決まった理由について2つあります。

 1つ目は、「工賃向上」という目的に対して、コストを抑え、最大限就労所へ還元を行う必要があったためです。アイスの場合は冷凍保存や配送といったコストが大きく、現実的に金銭的還元が難しい状況でした。そこで、比較的保存期間が長く、冷凍配送の必要がない「焼き菓子」が候補にあがりました。

 2つ目は、障がい者雇用との相性が良かった点です。具体的には、焼き加減等のミスがあった場合、ラスクとして再活用・販売ができる可能性があり、ある程度のミスを前提にフィードバック・ループを回す必要がある点が、本プロジェクトに適していました。こういった点が決定打になり、一旦フィナンシェに落ち着きましたが、今後もクッキーなどを模索していく必要があると考えています。

学生記者:自分自身、販売する側の立場に立つ経験が少なく、今回聞けたリスク管理は参考になりました。働く側の視点にもなって、制作するものを決める重要性に気がつきました。

プロジェクトを進行していく上での障壁、今後を見据えた改善点

学生記者:今回このプロジェクトを進行していくうえで発生した失敗や障壁などがあれば教えてください。

菅谷さん:失敗という失敗は現状ないのですが、今回のプロジェクトに協力してくださっているMAEDA OLIVE FARMさん、あまづキッチンさんらと連携していることから、難易度の高いことをしているという実感を持っています。その中で生まれた障壁だと、先ほど話したアイスの機械の故障です。しかし、そのような障壁があったからこそ、「障がいを持つ方々のことを本当に考えた商品とは何か?」という問いに立ち返ることができました。そういった意味では、必ずしも悪い出来事だったとは言えないと感じています。

また、私達だけができる取り組みではなく、他の企業でも採用できる再現性のある仕組みを考えるということが、プロジェクトを進めるうえでとても難しいと感じました。

林さん:マーケティングについても失敗といえる失敗はまだないのですが、自分一人で進めるのではなく、一人一人の意見や能力を引き出しながら進めていくことに難易度の高さを感じました。新たにプロジェクトに参加するメンバーを育てていくことも必要であるため、その部分は自分の中でも課題として認識していました。

学生記者:一度で終わるものではなく、継続していくプロジェクトだからこその重要な視点であることが分かりました。

同情ではなく、味で挑む

学生記者:この商品はどういった層をターゲットとしていますか。

菅谷さん:社会課題に共感する人というよりは、純粋にお菓子が好きな人をターゲットとしています。ラベルなどで障害を持つ方が制作していますという情報を押し出して販売してしまうと、その内容が響いた人のみが購入するという形になると思いますが、私たちの目的としてはそういった方だけでなく社会課題を知らない人に届けたいという思いが強く、味や品質を押し出していけるようにしていきたいと考えています。そのために、地元洋菓子店のパティシエに味のアドバイスをいただくなど、学生の枠を超えた品質向上を行っています。

林さん:一点補足すると、今回のプロジェクトの軸としてあるのが、美味しそうという感想から入ってもらうことです。現状だと応援するために購入してもらっているので、それを味や品質を見て買ってもらえるようにしていきたいですね。オリーブの葉っぱを使っていることやこだわりなどをクラウドファンディングの冒頭部分に入れることで応援のためにではなく、普通に欲しいから買う、美味しそうだから買うという方面に変えていきたいです。

B型就労者の今後、賃金上昇への第一歩へ

学生記者:最後に、今後どういった社会になっていってほしいかお二方の思いをお聞きしたいです。

菅谷さん:個人的な思いがそのままプロジェクトの思いになっている部分もあります。個人的な思いがプロジェクトの思いだからこそ、協力してやっていけていると思っています。純粋な思いとして、目の前で困っている人がいたら助けるというのが大前提としてありますが、それの延長線上でどうなってほしいかというと、今回のプロジェクトの主軸である時給243円のB型就労者の問題を解決できるような社会になってほしいと考えています。

林さん:B型就労者の現状を多くの人に知ってもらうことが一番の目標で、こういった課題を考えることができる社会であってほしいなと思っています。フィナンシェを販売する上でも、直接B型就労者の給料が上がるよう取り組みを続けていく所存です。実際にフィナンシェを購入した人にも伝えていき、買ってよかったという消費者の声を、B型就労者が実感することができるようこれからも励んでいきたいです。

編集後記

今回の取材を通じて、B型就労者の賃金に関する社会課題について知ることができました。福祉を“支援”ではなく“価値創出”としてとらえ、社会課題に対して真正面から取り組む菅谷さん、林さんの姿を見て、一刻も早い課題解決に繋がっていってほしいと思っています。

<執筆者> 福知山公立大学 地域経営学部 地域経営学科 2年 畠山瑛成

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