堀場エステックって?
大柿さん:はじめまして、堀場エステックの大柿です。本日はよろしくお願いいたします。
学生記者:よろしくお願いいたします、大柿さん。私たちからも簡単に自己紹介をさせていただきますね。私たちは「UF Student Journalist」という学生プロジェクトを進めておりまして、地域や全国の企業家の方々にインタビューを行い、成功までの道のりや企業のおもいなどを記事にして発信しています。私たち自身が仕事や人生観について学びながら、企業や挑戦したい人々の背中を押せるような記事を届けたいと思っています。本日は堀場エステックの事業や思いについてお話を伺えたらと思います。私は3回生の渡部、2回生の前田と申します。よろしくお願いいたします。
大柿さん:よろしくお願いします。
学生記者:ありがとうございます!では、早速インタビューを始めさせていただきますね。私たちの中で堀場エステックがどのような会社かという認識ができていません。そこで、堀場エステック京都福知山テクノロジーセンターについて教えていただけますか?
大柿さん:はい。まず全体からお話しすると、HORIBAグループは世界29の国と地域に50のグループ会社を持ち、「はかる」技術でグローバルな事業を展開する、分析・計測システムの総合メーカーです。その中でも堀場エステックは、特に半導体デバイスや、それらの製造装置をビジネスにしておられるお客様に向けて、様々なガスや液体を計測・制御する製品を販売しています。そして、ここ京都福知山テクノロジーセンターは、研究開発拠点となっています。現在建設中の新工場は、ここで開発された要素技術を含む製品を製造する施設であることから、研究開発と製造両面における主要拠点として、福知山エリアの重要性が今後ますます大きくなっていくと考えています。
学生記者:なるほど、新しくできるのは工場の方ですね?
大柿さん:はい、その通りです。今回は既存の研究所の増築と新工場の設立、つまり福知山に2つの投資を行う予定です。主にマスフローコントローラーという半導体製造装置に使われるガス流量計測制御技術を搭載した製品やその他のプロセスで必要になる製品を、安定的に供給することが目的です。
学生記者:ありがとうございます。堀場エステックにおける京都福知山テクノロジーセンターの位置づけが分かった気がします。
大柿さん:HORIBAグループ全体では、分析・計測技術を核に様々な製品を提供しています。例えば、半導体関連部門では半導体製造プロセスで使われるガスや薬液の制御技術を手がけていますが、他にも半導体ウェハ表面の異物検査装置なども作っています。そういった広範囲なお客様のニーズにグループ全体が持つ幅広い技術で応えられることも1つの強みです。
学生記者:ありがとうございます。リニューアルするテクノロジーセンターでは人々が純粋に働きたいと思える場所にすることを目指しておられると思うのですが、そのビジョンが、内外のデザインや施工にどのように反映されているのか、お聞かせください。
大柿さん:ありがとうございます。建物は建設中なので、詳細をお話しできるのはもう少し先になりますが、設計段階では安全性と機能性に重点を置いています。特に、エンジニアが最先端の半導体プロセスに関わっている当社の研究施設では、常に安全が最優先されます。私たちは、エンジニアが効率的かつ創造的に働くことを望んでいるため、それをサポートする最新の設備を備えた施設を作りたいと考えています。たとえば、AIに代表されるようなデジタル開発の専用ラボを計画しています。さらに、建物の美観も重要です。私たちは、高品質かつデザインにこだわった内外装素材や、円滑なコミュニケーションが取れるよう設計された共有スペースで、居心地の良い雰囲気を作り出したいと考えています。このような環境は、現在働いている社員のみならず、採用候補者や近隣企業、地域住民の皆様にも共感いただけるものになると考えています。
学生記者:研究中心の施設になりそうですね。
大柿さん:そうですね。テクノロジーセンターの社員のほとんどはエンジニアですから、ラボの機能や設計については積極的に彼ら彼女らに意見を求めています。私たちは、福知山に関わるエンジニア全てが働きたいと思えるスペースを作り、生産性を高めるための最高の設備や環境を提供したいと考えています。現在の社員だけでなく、新しい才能を引き付けるためにも、適切に設計され、設備の整った拠点づくりがサステナブルな事業継続のためには重要であると考えています。
堀場エステックのここがすごい!
学生記者:では、堀場エステックの強みについて教えていただけますか?
大柿さん:堀場エステックの強みは、特に精密な流量計測制御技術にあります。ガスや液体の微細な流量をコントロールする技術は、半導体製造プロセスに欠かせないものです。HORIBAグループ全体としては、広範囲な「はかる」技術を提供しており、その精度や対象範囲の広さで優位性を発揮しています。
学生記者:なるほど、「はかる」技術が強みなんですね。対象範囲の広さへの言及がありましたが、新しい市場の見つけ方について教えていただけますか?
大柿さん:私たちの技術のコアは「はかる」ことにあります。創業者である堀場雅夫が開発したpHメーターを皮切りに、様々な分析・計測技術を応用してきました。新しい市場を見つける際には、動向を予測し、お客様からの要望を受け提案することが重要です。日々の営業の現場はもちろんのこと、例えば展示会などのイベントで直接お客様の声を聞き、そのニーズに応じて製品や技術を広げていくことが、我々の市場開拓に繋がっています。
学生記者:ホームページでNASAの小惑星探査機オシリス・レックスが採取した小惑星ベンヌの石や砂などの資料分析を開始したと拝見しました。このミッションになぜ着手されたのかまたどのような効果をもたらすのか教えていただけますか。
大柿さん:こちらの案件はHORIBAグループの中でも特に分析・計測の受託サービスを行っている堀場テクノサービスが担当しております。背景としては、微量なサンプルでも高精度なデータを取得することのできる堀場テクノサービスの技術力をご評価いただいたのではないかと考えています。具体的には、炭素・硫黄分析装置を用いて、ベンヌの試料に含まれる有機炭素や炭酸塩などの量を調査しました。こういった地道な研究の積み重ねによって、太陽系と生命の起源や進化の解明につながっていくことが期待されています。私たちの得意とする「はかる」技術が生命の起源を解き明かすこと、宇宙の真理に迫るということは社会的に意義の大きい取り組みだと考えていますし、それに貢献できるということは非常にありがたい事であり、我々のモチベーション向上にも繋がっています。
堀場エステックは「おもしろおかしく」働ける
学生記者:ここからは働き方について注目していきたいと思います。スローガンについてですが、「おもしろおかしく」という社是があると思います。
大柿さん:はい。私自身も学生時代にこの社是を聞いた時、非常に興味が湧いたことを覚えています。それがきっかけで、会社の説明会に参加することになり、最終的にご縁があって働くことに決めました。考えてみれば、会社で働く時間はかなり長いですよね。例えば、22歳で大学を卒業して社会人になったとしたら、おそらく40年くらいのキャリアを過ごすことになると思います。その40年間で、昼夜を問わず働いているわけではありませんが、たとえば1日8時間というかなりの時間を会社で過ごすことになります。自分が取り組む仕事が、楽しい・おもしろいと感じるものでなければ、人生全体の満足度は低下すると思います。自分の仕事にプライドを持ち、心から楽しめるようになれば、自ずと人生の満足度が上がり、会社の業績も良くなります。個人の価値観や考え方は違って当然ですが、HORIBAグループが誇りにしているスローガンであり、1人1人が楽しんで働いて欲しいというおもいが込められています。
学生記者:ありがとうございます。一人一人が楽しんで働けるようにというおもいが込められていたのですね。
大柿さん:ありがとうございます。HORIBAグループ全体では約8,700人の社員を擁し、そのうち60%以上が外国人です。私たちは日本にルーツを持つ会社ですが、さまざまな文化や言語、視点を尊重し、理解していかなければなりません。私たちのグローバルビジネスでは、多様性と個性を受け入れて効果的に機能することが必要なのです。それと同時に我々日本人が世界の人々に対して、日本や京都文化の素晴らしさ、伝統を積極的に発信することも大切です。
学生記者:1953年に設立された堀場製作所ですが、今でも受け継がれる創業者のおもいについて教えてください。
大柿さん:「ほんまもん」のソリューションを提供し続けることだと思います。技術にこだわること、また社員への福利厚生に関しても「ほんまもん」のソリューションを提供し、様々な意味でプライドを持って仕事をしようと考えています。創業者である堀場雅夫は、誕生月の社員に自らが握ったおにぎりを配るなど社員一人ひとりとface to faceで向き合う機会を大切にしていました。現在は会社の規模も大きくなり、当時と形式は変化していますが、今も変わらずこういったコミュニケーションをとり、京都企業としての誇りやおもいを社員に伝えています。こうして培われた企業文化と、HORIBA独自の「はかる」技術を組み合わせ、お客様に「ほんまもん」のソリューションをお届けすることで社会に貢献するというおもいを胸に、私たちは日々働いています。
堀場エステックのこれから
学生記者:ありがとうございます。最後に、今後の展望について教えてください。
大柿さん:研究所の増設と工場の新設における展望としては、双方を同じエリアに置くことで、研究所でできた新しい技術や成果をいち早く生産の向上にフィードバックし、効率の良い物づくりを目指していきたいと思っています。HORIBAグループは、ビジョン「Joy and Fun for All おもしろおかしくをあらゆる生命へ」ならびに、ミッション「ほんまもんと多様性を礎(いしずえ)にソリューションで未来をつくる」を掲げ、多様な事業とユニークな企業文化で、これからも独自の価値を創出し続けていきます。
編集後記
今回のインタビューでは、堀場エステックの大柿さんから、同社の技術力や企業文化、そして新たな施設の取り組みについて伺うことができました。特に印象的だったのは、「はかる」技術における強みと、それを活かした革新への挑戦です。また、創業者のおもいが現在も息づく企業文化や、「おもしろおかしく」というユニークな社是が社員のモチベーションを高め、楽しく働ける環境作りに貢献していることも、堀場エステックの魅力だと感じました。新たな工場とテクノロジーセンターが、そのビジョンを具現化し、技術革新と働く人々の充実感が両立する場になることが期待されます。未来を見据えた展望と、創業者のおもいを大切にしながら成長を続ける堀場エステックの姿から、多くの学びを得られました。
〈執筆者〉福知山公立大学 地域経営学部 地域経営学科 3年 高島駿斗