本記事は令和7年6月14日に開催された、「令和7年度 第2回NEXT産業創造塾」(zoom開催)でゲスト講師として登壇されたSHIBUYA QWSのエグゼクティブディレクターの野村幸雄氏と福知山公立大学教授の亀井省吾氏とのパネルディスカッション記事を公開いたします 。
野村幸雄氏「問いの集まるコミュニティーSHIBUYAQWSの取組-」
問うだけじゃなく、出会うだけじゃなく、生み出すだけじゃなく、世界を変えよう

野村氏は、2001年に東京急行電鉄株式会社(現在の東急株式会社)に入社され、2014年からは都市開発本部渋谷開発事業部にて渋谷スクランブルスクエアの開発を担当しました。
野村氏は、『SHIBUYA QWSが提供する価値として、これまでに交流することのなかった多種多様な人々が集い、スクランブル(越境する)し、自発的・創発的に問いの感性を磨き合うことで可能性の種を生み出す「Scramble Society」、大学をはじめとする様々な領域のパートナーとの連携から生まれる独自のプログラムが、化学反応を生み出す「独自のプログラム」、200名規模のイベント受け入れが可能なスクランブルホール、グループワークへの集中力を高めるプロジェクトスペースといった「多様な空間」の3点である。』と話しました。
QWSの生み出すムーブメント
野村氏は、「QWS内で多くのイベントの開催によって多角的な意見交流の場を生み出すことが出来ている。QWSの会員さんと完全な外部の一般の方を集め、ワークショップ形式で討論の場を設けている。」と話しました。
また、「座学で学べるオンラインプログラムやQWSチャレンジといった、多様性のあるコミュニティ実現のためのイベント運営を年間800回ほど運営している。昨今は高校生、高専生、大学生らの参加が増加しており、QWS内でも大学生のグループが自治体と協力し、企業を生み出す事例もある。」
SHIBUYA QWSの提供する施設により、様々な人々との関わりが生まれることで新たな価値を創造することができ、共感できる問いが生まれることで「共創」が現れる、と野村氏は話しました。
共創、そして問いとは
「共創とは、企業が様々なステークホルダーと協働することで、共に新たな価値を創造することだ。」と野村氏は話しました。
共創の生まれる前提条件というものをSHIBUYA QWSの5年間に及ぶ運営によって見つけ出したそう。違う目線で物事をみることによって新たな価値が生まれ、そこに共創の原点があり、SHIBUYA QWSはそれを満たす空間であると話しました。
QWSでは自らの問いを重要視しており、問いを通じて相手にとってのメリットを考えるということが価値の創造のための前提条件であると共に、共創における質問、発問、問いの違いについて話しました。
「質問というのは、相手は答えを知っているが自分は知らない。情報を適切に聞き出すために質問する。逆に発問は自分が答えを持っていて、相手にそれを問うものだ。そして問いというのは答えが定まっていないもので考えてみたいと思わせるものだ。対話を通じてゴールを探り上げていくのがQWSにおいての問いである。」
答えのない問いにより、多種多様な人々がQWSでのイベントや対話によって試行していくことにより、独創的かつ柔軟性のあるアイデアの創造につながっていると、QWSと地域が連携して生まれた事業を紹介するとともにQWSの紹介を締めた。

パネルディスカッション「都市と地方の共創から新産業は創出できるか?」

福知山公立大学地域経営学部教授である亀井省吾氏をコーディネータに、2名の講演者がパネラーとなり、参加者の質問に対して回答を行いました。主な質問と回答は、以下のとおりです。
まず、「地域側が都市部の企業団体と連携を図るにあたって、どのようなアプローチや事前準備が求められるのか」という質問がありました。
それに対し野村氏は、「地域の持っている魅力的なリソースを明確にすることではっきりとわかってくる」と回答しました。それに続けて地域と都市部の課題の結びつきについて亀井氏が追及すると、野村氏は「ワークショップを通じて、言語化することによって誰かに言ってみたくなるような感動を与えることがあり、このような信頼関係が課題の結びつきとつながってくる。」と答えました。
続いて、「地域だけでプロジェクトを行うと小規模で終わってしまい、持続しない活動となってしまうため都市側を巻き込むための方法は何か」という質問に対し、
「都市部が地域側の立ち上げたプロジェクトに対し、どれだけ関心を持つか、魅力的に思わせるかというのが重要だ」と答え、共感の重要性について強調しました。
最後に亀井氏が野村氏に対し、「問いの重要性についてこれまでの講演で理解してきたが、様々な人をネットワークで繋いできた野村氏だからこそ、問いの再設定についての仕掛けについて教えていただきたい」という問いかけに対して、
「問いを考えるメソッドはまだまだ発展途上の部分がありますが、QWSでの参加者へのヒアリングなどから、問いの再設定はずっと問い続けていくべきだとこれまでを振り返って私は思います。」と述べ、有意義なパネルディスカッションは締めくくられた。
レポート後記
ここまでSHIBUYA QWSの事例からパネルテーマである「都市と地方の共創から新産業は創出できるか?」について考察してきましたが、今回の産業創造塾は「共感」という言葉にすべてが詰まっていると感じました。
地域と都市、企業と学生。互いに手を取り合い、共創を生み出すためには共感によって野外に信頼しあえるような関係性が課題解決に繋がるのだと学びました。
<執筆者>福知山公立大学 地域経営学部 地域経営学科2年 畠山瑛成