- 飯渕さんはどんな事業をしているの?
- 独立して一人に寄り添うスキンケアを
- NEXT産業創造プログラムでの取り組みと、地域の生徒と作ったキキョウ石鹸
- 地域の可能性と起業の関わり
飯渕さんはどんな事業をしているの?
今回インタビューさせていただいたのは、スキンケア開発とコンサルティング事業を行っている、株式会社Mind Leaf、株式会社Lifexia、株式会社きみとなり代表の飯渕弘成さんです。「人の心はお肌の状態で大きく変わる」という点に着目して、敏感肌の方でも安心して満足にスキンケアが出来るように、「Natura Check」というブランドを作り上げました。また、NEXT産業創造プログラムでは、福知山高等学校三和分校の生徒と、福知山産の桔梗を使ったキキョウ石鹸を販売するというプロジェクトを行い、クラウドファンディングでは目標の5倍以上の支援を受けて商品化しました。そして、飯渕さんのstyleについてのお話も伺いました。今回は前後編2部構成の記事になります。
独立して一人に寄り添うスキンケアを
学生記者:飯渕さんは会社員で働いたのち、独立して起業されたとお聞きしました。どうして起業しようと思ったのですか。
飯渕さん:私はサラリーマンとしてスキンケア企業に勤めていました。企業の中ではどうしても利益を求めなければいけないのでお客様の要望を形にすることが出来ませんでした。お客様の声を商品化していくために独立して起業しようと考えました。
学生記者:お客様の声に目を向けるために独立を決めたのですね。会社員という立場を捨てて起業するということにはリスクがあり、不安を感じると思うのですが、一歩踏み出すきっかけのようなことがあれば教えてください。
飯渕さん:起業したきっかけは2つあります。私が勤めていた企業は人材不足で、様々な部署でのタスクを抱えており、過労が原因で倒れてしまったことがありました。「どうせ倒れるなら正しいと思うことに全力を傾けよう」そう思えたことがきっかけの1つになりました。もう1つは、敏感肌の知人の肌の悩みを解決したことです。私にとっては数ある悩みの一つを解決したにすぎないのですが、知人にとっては昔から悩んでいたことでありその時はとても喜んでくれました。そのときに「人の心はお肌の状態で決まる」のだと思いました。自分がつくったもので人を幸せにしたい、笑顔が見たいと思い、起業することを決意しました。そうして、株式会社Mind Leafを立ち上げました。
学生記者:なるほど。そういったきっかけがあって敏感肌の方も使えるスキンケア事業を始めたのですね。‘‘敏感肌で悩む人‘‘はいわゆる少数派=マイノリティだと言えると思います。マイノリティに注目することは起業につながりやすいのでしょうか。
飯渕さん:1から起業を考えるにはつながりやすいと思います。マイノリティの声は多数派=マジョリティーの中に埋もれてしまうことが多いため、市場競争のないブルーオーシャンになりえます。また目的とするターゲットの領域が狭いため、悩みを抱えている人の心をつかみやすいと思います。
学生記者:マイノリティをサービスに落とし込むことは難しそうですが、サービスに落とし込むためのコツや方法はありますか。
飯渕さん:お客様の声に耳を傾けることが必要だと考えています。起業した当時はライブ配信をしながら視聴者の質問に答えることで顧客のリアルな声を聴くことをしていました。今はお客様の声を聞く方法を変えていて、パーソナライズソープによる顧客接点をもっています。現在はサロンのオーナーと学生の2組にヒアリングをしながら商品開発を行っており、LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)の向上を目指しています。製作段階から参加してもらうことにより、忖度なく意見を言ってもらえますし、満足いく商品をつくろうとするので熱意をもって参加してもらっています。アトピーは‘‘なにかわからない‘‘という言葉が語源になっています。悩んでいる人のために丁寧なヒアリングを行い、原因を仮説立てて説明することでお客様は安心してくださるのではないかと考えます。
NEXT産業創造プログラムでの取り組みと、地域の生徒と作ったキキョウ石鹸
学生記者:飯渕さんは顧客のヒアリングを大切にされており、そこで出てきた意見を実現したいという強い意志をもって事業に取り組まれていることがよく分かりました。飯渕さんはNEXT産業創造プログラム一期生だとお聞きしています。どのようなきっかけでこのプログラムに参加しようと思われたのですか。また、ご自身にとってどのような経験になりましたか。
飯渕さん:私が通っていた大学院で教鞭をとられていた教授から声をかけていただいたことがきっかけです。サラリーマン時代には福知山で営業活動をすることもあったので、そのつながりを活かして何かできるのではないかと考えました。そして私にとってNEXT産業創造プログラムは大学院で学んだことを実践するいい機会になりました。NEXT産業創造プログラムは約2か月の授業期間があったのち、PBL(問題解決学習のこと。生徒自らが問題を見つけ、解決する能力を身に着ける学習方法のことをいう。)期間に入ります。授業では大学院時代に学んだことを復習でき、PBL期間ではすぐに学んだことを実践することが出来ました。すぐに実践できることこそがNEXT産業創造プログラムの最大の強みだと言えると思います。私はともに授業を受けた福知山公立大学の大学生と、福知山で採れたキキョウを使ったキキョウ石鹸の開発に取り組みました。
福知山ゆかりの偉人である明智光秀が家紋として使ったキキョウと自分が持つスキンケア開発の知識を組み合わせて商品をつくりたいと思ったのですが、キキョウの根は貴重でなかなか手に入りづらいものでした。しかし、キキョウの栽培を行っていた福知山高等学校三和分校の高校生に協力してもらったことでキキョウの確保ができ、商品化することができました。また高校生と協力し合いながら事業を進めていくことに決めました。資金調達面ではクラウドファンディングを行いましたが、多くの方の支援により目標金額を大幅に超えて無事事業化することが出来ました。その後、福知山でも株式会社Lifexiaを設立し、東京と福知山2つの拠点で会社を持つことになりました。
学生記者:高校生と共に事業を始めていくうえで、どんなことを期待していましたか。
学生記者:そうして作り上げたキキョウ石鹸は飯渕さんにとってどのような存在になりましたか。
飯渕さん:キキョウ石鹼は高校生をはじめとした福知山市民の方々の協力、つながりがあったからこそ形にできたのだと思います。桔梗の花言葉は「永遠の愛」・「誠実」です。このキキョウ石鹸も地域の方々にずっと愛されるような商品になってほしいと思います。また、私が仕事で行き詰った時には初心にかえして大切なことを教えてくれる、そんな存在になっています。
地域の可能性と起業の関わり
学生記者:飯渕さんにとってNEXT産業創造プログラムでの経験がいかに大切なものになったのかわかりました。ところで、現在お住まいになっている東京ではMind Leaf、福知山ではLifexiaと二つの地域に拠点を構えるのは非効率的のように思います。1つの会社に統合したり、福知山での活動を他の人に任せたりせず、2つの地域に拠点を置いているのはなぜですか。
飯渕さん:正直大変です。(笑)しかし、福知山にきて環境を変えることは私にとって良い影響を与えてくれています。普段生活しているだけでは思いつくこと、引き出しに限界があります。環境を変えることで物事を新鮮にとらえることが出来ています。そして、事業をしていく中で福知山が大好きになりました。福知山にはいつでも助けをくれる人、私を迎え入れてくれる人がいます。今では、福知山は私にとって心のふるさとになっています。だからこそ、福知山から全国に発信することで福知山市や三和町に恩返しが出来ればなと思います。
学生記者:飯渕さんは福知山という地域の中で「キキョウ」という地域資源を見出されましたが、地域の中で可能性を見出すにはどのようなことが必要だと考えられますか。
飯渕さん:福知山で活動を始めるとなった時に、私はまずその地域を知らなければいけないと思い地域の方々と対話をしました。地域で生活する人にとっての‘‘あたりまえ‘‘にこそ、その地域の強みが隠れています。地域というコミュニティの外側からよそ者視点で目を向けながら、その中で自分が好きになったもの、情熱を持てるものを見つけることで今までにないアイデアが生まれるのです。私にとってはそれが、キキョウでした。
学生記者:なるほど。その観点から行くと、地域のコミュニティの外から関わる人よそ者として、大学生は有利であると言えるのでしょうか。
飯渕さん:一概にはそうとは言い切れません。社会人にはこれまでの経験から社会的価値を比較して魅力を見出すことが出来ます。対照的に学生はバイアス、思い込みがなく純粋に物事をとらえることが出来ます。だからこそ私も大学生とつながりをもって、日々刺激を受けています。
前編では飯渕さんが取り組んでいるスキンケア事業について詳しくお聞きしました。後編では飯渕さんが取り組む学生起業支援について詳しくお話を聞いています!
(後編へ続く)